そのうちに、では遅いかも、リビングウィルと遺言の話
認知症だった母の死
高血圧で、心臓にペースメーカーをつけて、毎食後、何種類もの薬を飲まなくてはいけなかった母は、認知症、と診断された2年後に、肺炎で亡くなりました。
自分の望みは、ほとんど口にせず、いつも家族優先だった母。
人生の最後を迎えるときに、どのようにして欲しかったのかは、わかりませんでした。
元気だったころに、一度、『お葬式やお墓はどんなのが良いの?』、とたずねたことがあります。
母は、ちょっと困ったような顔をして、結局、笑ってこたえませんでした。
私だって、そんなこと尋ねるのは、どうかなって思ったんだよ、お母さん。
でも、教えておいてほしかったな。
遺族はいろいろやることがある
まずは、葬儀の準備があるでしょう。
お役所でやらなければいけない、公的な手続きが、いくつもあります。
書類や通帳や印鑑がどこにあるのか、探しまわったりもします。
遺品をどうするか、頭をなやませます。
ゆっくり悲しんだり、思い出にひたるのは、ずっとあと。
我が家の遺言
私たち夫婦は、財産がなく、子どもがひとり。
私にとって、相続、というのは、2時間ドラマの中の世界(笑)で、自分には関係ないと思っていました。
ただ、母の死後、いろいろな手続きのための書類が、どこにあるかわからずに探しまわったり、母が大切にしていた品を、どう処分したら良いか、悩んだりしながら、決めたことがあります。
私の順番がきたときには、残される家族が、迷わなくて良いように、私の意思がわかるようにしておこう、と。
1. 必要な書類を、だれがみてもわかるように、ひとつにまとめる
- 銀行口座
- 生命保険証書
- 年金書類
- 親戚や友人の連絡先
- その他もろもろ
それまで、ばらばらにしまっていた、書類やアドレス帳を、会社で使うような書類バインダーにまとめました。
インデックスをつけ、だれが見ても、必要な書類がすぐに見つかるようになりました。
2. 遺言を書く
遺言、というよりは、指示書といったほうが良いでしょう。
私の衣服や身の回りの品物、手紙や日記などを、どのように処分してほしいか、を具体的に書いたものです。
捨てるとか寄付するとか、娘が使いたければ使ってほしい、といったことです。
お墓には、何も持っていくことはできないって、言いますよね。
死んだ後に、私の物を、どう処分しようが、私には気になりませんが、書いておけば、夫や娘が、ムダに悩まなくてすむでしょう。
3. リビングウィル
リビングウィルは、実は、順番でいうと、遺言より前に必要になるものです。
病気や事故で、私の意識がなくなったとしても、どのような治療をしてほしいのか、を書いておき、私の意思を、医師や家族に、伝えるためのもの、それが、リビングウィルです。
遺言(遺品などの処分のための指示書)は、普通の紙に、手書きで書きました。
日付を書き、署名をしましたが、財産にかかわる内容がないので、法的に遺言として成立しなくてもだいじょうぶかな、と気楽に書いたのです。
リビングウィルは、病院で通用するものにしないと、私の希望する治療をしてもらえない場合があるので、スイスの赤十字のひな型を、使うことにしました。
自分の文章で、書かなければいけない部分もありますが、具体的な治療については、選択式になっているので、カンタンです。
- 痛いのはイヤなので、強い痛み止めの薬を使って、意識がなくなるとしても、痛みを緩和することを最優先する
- 人工呼吸器や胃ろうチューブは使用しない
- 生命維持のための機器を使用しない
といった項目に、チェック✅をいれました。
リビングウィルで、私が伝えたのは、もし、回復が難しい状態である場合には、人工的な方法で、生命を維持しない、つまり、尊厳死を選ぶということです。
最後に、日付を記入して、署名をしたら完成です。
リビングウィルは、私の意思を確認するために、2年ごとに書き換えるか、少なくとも、新しい日付と署名を、追加することになっています。
日本でも、病院やいろいろな団体のひな型を、送付してもらったり、ネットでダウンロードして使うことができます。
昨年は、日本で一人暮らしをしていたので、聖路加病院さんのリビングウィルのひな型を印刷して、必要事項を記入して、バインダーにいれ、用意していました。
リビングウィルで、私の家族は、治療方針に迷わなくてすみます。
私の意識がなくても、リビングウィルがあれば、私の担当医も家族も、どのような治療を、私が望んでいるか、理解することができます。
家族で話をしました
私と夫は、お互いに、最後のときをどのようにむかえたいか、二人でよく話しあいました。
そして、それぞれ、遺書とリビングウィルを用意しました。
そのあとで、娘と3人で話しあいました。
死の話は、なかなか口にするのが、むずかしい話題ですね。
でも、みんなに平等にやってくることなので、きちんと率直に、話しあっておけば、そのときが来たときに、心の準備が、少しはできているんじゃないでしょうか。
リビングウィルが無かったフランスのケース
フランスで、40代の男性が、事故のため、植物状態になったまま、数年がたち、回復は不可能と診断されました。
男性の妻は、生命維持装置をはずすよう、病院にもとめました。
一方、男性の両親は、生命維持装置をはずすことに反対し、裁判所に訴えました。
男性の兄弟姉妹も、賛成と反対の二手に分かれて、何年も、裁判で争うことになったのです。
賛成も反対も、まちがっているわけでは、ありません。
男性が、リビングウィルを用意していれば、このような争いには、ならなかったでしょう。
断捨離をしなくちゃ
物を大切にする世代だった母は、ものすごい量の衣服や小物を、残しました。
小柄で、140センチそこそこだった母の服は、私が着ることもできず、リサイクルショップに、引き取ってもらいました。
趣味の社交ダンスの衣装が、何十枚もありましたが、社交ダンスサークルの方に使っていただけることになりました。
とにかく、かたづけが大変でした。
私は、自分の身の回りの品を、整理しておこう、と決めました。
私には、思い出のバブリーな肩パッドのジャケット(何十年すてられないんだよっ!)は、ほかのひとには、ただのゴミです。
いやいや、私にとっても、クローゼットの場所をとるだけの、ゴミなんです。
ゴミ袋10枚、いっぱいになりました。
こんなに不要なものをかかえて生きてきたのか、とビックリしました。
まだ、使える衣類やバッグ、靴は、救世軍など慈善団体に寄付しました。
これからは、よくよく考えて、買うようにしなくては。
でも、いつの間にか、また、いらない物が増えるんでしょうねー。ふう。
それに、捨てられなかった物が、あるんです。
無器用な私が、手作りした娘の手さげやきんちゃく袋。
娘が、ピンクや水色が好きだったのが、よくわかりますよね(笑)
思い出の品は、処分がむずかしいのです。
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