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英国は欧州連合から離脱せず、スイスが欧州連合の一員だったりする未来

欧州連合からの離脱派と残留派の論争が続く英国では、「だれか感じの良い人に出会っても、欧州連合からの離脱を支持しているのか、残留を希望しているのかを、まず確認して、恋に落ちるようにしなさい。」、というアドバイスが、なかば本気でささやかれています。

 

恋人同士で意見が違って、別れるようなことになったら悲劇ですね。

 

永世中立国のスイスですが、実は27年前に、欧州連合に加入する一歩手前だったんです。

 

英国とスイスと欧州連合についてざっくりまとめてみました。

 

Brexit/ブレグジットってそもそも何でしょう

欧州連合の旗が画面の左半分とイギリス国旗が右側に半分ずつになっている。

British(英国の)とExit(出口、退場)のふたつの言葉を合わせた造語です。英国の欧州離脱を意味します。

 

2016年6月に英国は、国民投票により、欧州連合(EU)を離脱すると決めました。離脱派が51.9%、残留派が48.1%というわずかな差だったために、投票から3年たった今もなお、国を分断する論争が続いています。

 

今年の3月29日が離脱の期限でしたが、3年近い交渉でも、英国と欧州連合の間で、離脱の条件が合意されなかったので、離脱は10月31日まで延期されています。

 

英国のメイ首相が議会に提出した離脱交渉の条件は、議会が拒否し続け、とうとう辞任が決まりました。次の首相にだれがなるにしても大変な仕事が待っています。

 

ブレグジットの争点

欧州連合からの離脱を求めた人たちの声は、大きくまとめると、

 

  • 欧州連合に新しく加盟した、ポーランド、ルーマニアなど東ヨーロッパの国々からの大量の移民が英国民の仕事を奪っている
  • ブリュッセルの欧州連合本部のエリート官僚による支配への反発

 

の2点です。

 

その上に、離脱派は、

  • 離脱すれば毎週3.5億ポンド節約できる
  • 英国の主権を取り戻そう

と熱烈にアピールして勝利したわけです。

 

ちなみに、投票後になって、この3.5億ポンドは全く根拠がないことがわかりましたが。

 

野党である労働党は、もう一度国民投票をやろうとしていますが、世論調査では85%の国民が、3年前の国民投票から意見を変えていない、という結果が出ています。

 

理性よりも感情で決まった国民投票、と言われていますが、英国の運命が大きく変わったことは確かです。

 

スイスの選択

青空を背景にスイスの国旗がはためいている。


スイス政府は、1992年に欧州連合に加盟する申請をしています。しかし、その年末に実施された国民投票で、欧州連合加盟に反対が50.3%の多数だったため、欧州連合への加入は見送られてしまいました。

 

欧州連合加盟をすすめていた当時の政府の代表は、開票日を『スイスの暗黒の日曜日』と呼びました。投票結果は、スイスののフランス語圏では賛成派が多く、ドイツ語圏では反対派が多いという結果でした。

州の境界線のはいったスイスの地図が緑や赤で塗り分けられている

上の図は、国民投票の結果を表したものです。緑は、欧州連合加盟賛成の州。赤は反対の州。フランス語圏の州は賛成で、ドイツ語圏の州は反対と、くっきり分かれています。

※スイスは、人口の70%がドイツ語、20%がフランス語、10%がイタリア語の多言語国家です。国民投票には、それぞれの考え方の違いがよく反映されます。

 

当時、ジュネーブに住んでいて、欧州連合加盟に賛成投票したスイス人の夫と私には、大きなショックでした。欧州連合加盟国の国民は、加盟国のどこでも自由に移住して、働く権利があります。まだ若かった私たちは、英国に移住したいと夢みていたのです。

 

スイス政府は、その後、長い時間をかけて、欧州連合と交渉を続け、スイス人が欧州連合内で移住、労働する権利などを獲得することに成功しました。

 

スイス国籍の娘は、今年の夏休みは英国でアルバイトをする予定です。私の夫が若いころにはできなかったことです。(うらやましい!) スイスの若い世代に、スイス以外の国にも未来が開けるのは、すばらしいことです。

 

申請されたまま25年間放置されていた、スイスの欧州連合加盟申請は、2016年にスイス政府が正式に取りやめにしました。そのニュースへの国民の反応は、「とっくに申請は取りやめられていたと思ってたよ!」でしたが。

 

考えても仕方ないもしもの世界

私の大好きなSF作家、フィリップ・K・ディックの作品に『高い城の男』があります。

 

第二次世界大戦で、ドイツ・イタリア・日本の枢軸国側が勝利した架空の未来を描いたサイエンスフィクションの名作です。

 

 

スイスが欧州連合加盟の国民投票をした当時、加盟しないことは、スイスの経済の発展に大きなマイナスだ、と政府も多くの企業も(私と夫とフランス語圏の人々の多数も)考えていました。

 

でも、加盟拒否の国民投票から27年、スイスはなんとかうまくやってきました。欧州連合に入るメリットはない、と見極めたので、25年間もそのままにしていた加入申請も2016年に取りやめたわけです。

 

スイスがあのとき、欧州連合に加盟していたらどうなっていたでしょうか?

 

英国が欧州連合から離脱しない未来は、どうなるはずだったのでしょうか?

 

つい、ありえない未来を想像してみたりします。たまに、自分の過去を振り返って、「あのとき、ああしていたら!」って頭を抱えたりしますが、国の歴史の中でもそういう場面があります。

 

過半数の国民が離脱を選択した以上、結果が、英国にとってプラスになるように、政府も国民も努力していくしかありません。人間だって、過去にこだわってくよくよせず、前に向かってすすむしかないんです。

 

離脱が良かったのか悪かったのか、2~3年で答が出るものではないでしょう。英国の歴史的な転換期に、ちょっとわくわくしています。スイスみたいに気長に25年ぐらい様子を見てみましょうか。