スイスのミステリー作家たち
スイスとミステリー
スイスにもミステリー作家さんがいます。ハイジの山のイメージに合わないでしょうか?
今夜は、新進で勢いのある二人の作家さんを図書館に迎えるイベントに、100人以上のミステリーファンが集まって、いろいろお話をうかがいました。
二人の新進ミステリー作家
お二人とも、スイスのフランス語圏出身の方です。つまり、少数派!
スイスの公用語は、ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つです。ドイツ語が65%、フランス語が20%、イタリア語が10%、その他。ロマンシュ語を話すひとは、グリゾン州にわずか6万人。1%にも満たないんです。
Nicolas Feuz/二コラ・フーツ
ニューシャテル州で勤続20年の現役検察官!公務員でも2足のわらじがはけるのがスイス流かな。
2010年から毎年1冊ずつ新作を出しています。今年の夏に10冊めの本が出る予定で、これまで出版された本は、スイスのフランス語圏で10万部以上売れています。スイスでは大した数字ですが、印税が1冊2フラン(日本円でおよそ220円)と高ーく見積もっても、執筆だけでは生活できないですね。
彼の著作の特徴は、ひとこと、暗い。
本人いわく、『ミステリー映画でも最後がハッピーエンドなのは、好きじゃない』。なるほど。
現役の検察官だけあって、事件発生から検視や捜査の流れは、現実に沿って、非常に正確に描かれています。事件は、ニューシャテルで発生しますが、捜査がすすむと、ケニアや北欧、東欧など広い範囲に広がっていきます。ストーリーの中にでてくる外国は、すべて本人が旅行してみてきた場所だそうです。
また、アクションが多くて、各チャプターが短いので、あきずに先に読み進むことができます。
ストーリーの中の検察官は、毎回、無能で怠惰な人物として描かれています。本人がモデル?いやいや、そんなひとが、20年も現役はできないでしょう。自分が検察官だから、悪く描けるのですね。
また、ひとを傷つけたくないから、悪人とか、犯罪者は、実在の人物をモデルにすることは、ないそうです。3部作の中の主人公Michaël Donner(ミカエル・ドネー)のモデルは、仲の良い友だちで、スイスの国家警察の潜入捜査部門の責任者だとか。その方は、90キロの巨漢なので、そのままでは、アクションが難しいだろうと、本の中では、マイナス30キロのスリムでハンサムな人物に変えられています。
夏に10作目が出版されるので、今からわくわくしています。
Marc Voltenauer/マーク・ヴォルトナウアー
私たち家族の住む、ヴォー州出身。2015年に最初の作品が出版され、作品は、全部で3冊、新人さんです。銀行や医薬品関連の会社で働いていましたが、処女作が賞をとり成功したので、退職して、ミステリー執筆に専念しています。
舞台となるのが、美しくおだやかなスイスの山の村、そこに凄惨な事件がおきる!
第2作目のタイトルは、Qui a tué Heidi ?(だれがハイジをころした?)ですよ!
登場人物それぞれの、履歴書が書けるくらい、人物をつくりあげることが好きだそうです。
スイスからフランスへ!
スイスの市場は、単純に小さいので、執筆だけで生活できるスイスの作家は、限られています。それでも、ふたりとも、スイスでの成功のおかげで、フランスの出版社から出版することができたので、これからもっと売れるはずです。フランス本土だけでなく、アフリカの旧フランス植民地の国やカナダもあるし、世界のフランス語人口は、バカにできないんですよ。
サイン会
1時間半、ファンからの質問に答えながら、それぞれの執筆活動について、たっぷりお話していただいて、最後は、サイン会になりました。
サイン会って、その場で本を買って、サインしてもらうもんだと思っていたのですが、自宅から、購入済みの本をもってきて、サインしてもらっているひとが、結構いました。
うちにある本をもってきたら良かったな!フーツさんの本は全部もっているのに!とがっかりしました。そう、私は、登場人物にしあわせがやってこない、フーツさんの作品のファンなんです。
ヴォルトナウアーさんの本は、まだ処女作しか読んでいないので、今回、『だれがハイジをころした?』を買って、サインしていただきました。
せっかく勇気をふりしぼって、写真をお願いしたのにピンボケ!全くザンネン。
どうしてミステリーを読むのでしょう?
お二人から、『みなさんはどうしてミステリーを読むの?』と質問がありました。
物語の登場人物たちが、追い詰められながら、あきらめないで、たたかう姿が好きだから、でしょうか。究極の状態のときに、人間のホントウのところが見えるから。
自分は、安全なリビングのソファの上にいるのが前提です。もちろん。
老眼で乱視なので、ここのところ、本を読むとすぐ目が疲れてしまうのが悲しいですね。