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スイスの小学校は、外国人の子どもたちをどう迎え入れるのでしょうか?

私たち家族は、娘が小学3年生のときに、夫の転勤で、スイスにやってきました。日本語しか話せない娘を、スイスの学校は、どのように迎えてくれたのでしょうか?

 

高い時計台のある小学校の建物。古い歴史を感じる建物。

歴史のある小学校の建物

 

 

娘はmとnも区別できないんです!

私の夫は、スイス人です。スイスは、公用語が4つあります。ドイツ語フランス語イタリア語ロマンシュ語です。夫は、フランス語圏出身なので、フランス語が母国語です。

 

私たち家族は、スイスで生まれた娘が、まだ1歳になる前に日本に戻ってきました。夫は、日本語学校に通い、はやく日本語を話せるようになりたくて、家でも日本語を話していました。

 

娘は、保育園でも、家でも、日本語、という環境で育ち、フランス語が全く話せないまま、育ちました。これは、私たち親の失敗でした。本当は、家の中では、それぞれの親は、自分の母国語を話さなくてはいけなかったんです。つまり、夫は、フランス語を、私は日本語を話さなくては、いけなかったんです。

 

私の日本のおともだち一家は、私たちと同じ家族構成で、ご主人がフランス人、奥様が日本人、お嬢さん、でしたが、私の娘より1歳下の、そのお嬢さんは、きれいなフランス語を話していました。日本語が話せるご主人は、お嬢さんには、『パパは、日本語はわからない』と言っておいて、家の中では、フランス語しか使っていなかったんです。

 

国際結婚で生まれた子どもを、バイリンガルにするのは、親の責任です。片親の言葉しか使えないと、子どもが、触れられる文化も、片親だけのものになってしまいます。私と夫が、そのことに気づいたときには、もう遅くて、娘は、夫がフランス語で話しかけても、日本語でしか返事をしませんでした。

 

私の娘は、日本で暮らしていた間、毎年、夫の両親のところに遊びに行っていましたが、短期の滞在では、カンタンなフランス語しか、身につけられませんでした。

 

そんな中、娘が小学3年生のときに、夫にスイスへの転勤の話がきました。2年間という期限付きだったので、私たちは、『2年間、スイスの小学校に通えば、娘はフランス語を身につけられる!』と考えて、スイスに行くことに決めたのです。

 

この2年、は、事情があって、無期延期となり、夫は定年までスイスでがんばる予定なので、娘も私もずっとスイス生活中です。

 

市町村の窓口で住民登録

スイスに到着したら、まずやらなければいけないのは、もよりの市町村での住民登録です。学校に行く年齢の子どもがいる場合、窓口で、学校を紹介してくれます。

 

学校で面談

私の娘は、日本にいれば、小学3年生の3学期のはじめ、1月にスイスに来ました。

転入先の市の担当から、小学校を教えてもらい、面談の予約をしました。

 

まずは、校長先生と担任の先生とお話をしました。

 

通常であれば、娘の年齢なら、スイスでは4年生に編入されるところですが、

  • 娘がフランス語が全く話せない
  • 5年生になると進学のためのテストが増える

 

という点から、1年下の3年生のクラスに編入することになりました。

 

 

外国人のためのフランス語クラス

左側に表紙におもちゃの挿絵がついた小さな子ども向けのフランス語童話の本。右側にはフランス語文法の本。

小さな子ども向けのフランス語の本とフランス語文法の本

 

次に、「外国人の子どもたちのためのフランス語クラス」の担任の先生のところに、案内されました。

 

娘は、そこでカンタンな学力テストを受けました。娘が受けたのは、日本語で書かれた学力テストでした。テストは、国語、社会、理科、算数の問題が、各国の言語に翻訳されていて、答を番号で選ぶようになっているので、どんな言語の子どもが受けても、学力をはかることができるわけです。なるほど~!と感心してしまいました。

 

娘の学力は、スイスの同じ年齢の子どもにくらべて、高いことがわかりました。日本の小学校ってスゴイと思いますよ。とても充実した内容を、きちんと教えてくれています。特に、算数のレベルが高いですね。スイスでは、3年生でやっと九九を始めるので、娘は、算数のクラスは、フランス語がわからないままでも、トップの成績でした。

 

学力テストの結果、算数や理科、美術、体育など、フランス語ができなくても、ついていけるクラスは、通常のクラスで授業を受け、そのほかの時間は、「外国人の子どもたちのためのフランス語クラス」で学習することになりました。

 

外国人の子どもへの対応

もともと、スイスは、公用語が4つあるぐらいなので、言葉が通じない人間同士が、ひとつの国で暮らすことに慣れています。1970年代からは、労働力不足をおぎなうために、イタリアやスペインからの大量の移民を受け入れました。夫は、イタリア人やスペイン人の同級生が、たくさんいたそうです。

 

また、国際紛争がおこるたびに、たくさんの難民を積極的に受け入れてきた歴史もあります。スイスの外国人は、全人口のおよそ20%。5人にひとりは、外国人です。

 

スイスの小学校は、フランス語が話せない子どもの教育については、とても慣れています。ほかに何人も、同じように、フランス語を話せない子どもたちがいたので、娘も、自分ひとりが特別、とは感じないで過ごせたことは、ほんとうに良かったと思います。

 

娘は、 「外国人の子どもたちのためのフランス語クラス」を1年半続けました。途中、少しずつ、通常のフランス語のクラスを増やしていき、「外国人の子どものためのフランス語のクラス」を減らしていきました。

 

日本語も大事なんです

海外在住の日本人の子どもたちが、日本語が、あまり上手に話せなくなる場合があります。両親が日本人であっても、現地の言語が、学校の友達や生活の中で、圧倒的な量になるので当然です。

 

ジュネーブには、週1回の日本語補習学校があります。娘は、毎週土曜日に通って、中学の卒業証書をいただきました。運動会などの行事もあるので、日本独特な文化に接することもできました。

 

日本語補習学校については、また別の機会にくわしく書きたいと思います。

 

海外で子育てをしている方は、大変なことがたくさんありますが、子どもが、親の言語を身につけること、が一番大切だと思います。言語が、その子どもの自我を確立するから、なんて、こむずかしいことはともかく、親子のコミュニケーションに壁ができない、からです。

 

イギリス人のお友だちは、お母さまが日本人なのですが、本人は日本語が全く話せません。日本の祖父母とコミュニケーションができないことや、日本の文化がよくわからないことを、ホントウに残念がっていました。