ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語、その上、スイスドイツ語となるともうお手上げ
スイスが誇るチョコレートを頂きました。
どれから食べるか迷うところです。
箱の裏にそれぞれのチョコの説明が書いてあります。
文字がびっしり。
スイスの公用語のドイツ語、フランス語、イタリア語の三か国語で原材料とそれぞれのチョコレートの説明が印刷されているので、文字数がやたらに多いのです。
スイス製品には、基本的に、すべての商品に三か国語の説明が印刷してあります。
スイスの公用語は4つ
およその人口比は、
- ドイツ語70%
- フランス語20%
- イタリア語10%
- ロマンシュ語0.5%
ロマンシュ語は、使用人口およそ3万人。消滅する危機にあります。
スイスドイツ語という存在
スイスの第一公用語のドイツ語は、ドイツで使われているドイツ語と同じです。
しかし、実際にスイスのドイツ語圏で話されているのは、スイスドイツ語なんです。
スイスドイツ語は、簡単に言うと方言(口語)の一種です。
例えていうと、私の地元、福岡では、日本語が公用語ですが、現地の人間が話しているのは、博多弁。
東京の人が福岡に来たら、博多っ子は日本語で話します。
東京の人が本当の意味で、博多っ子に受け入れられるには、博多弁をマスターする必要があります。
ところが、博多弁は、博多弁スクールがない、文法の本もない。耳で学ぶしかない口語です。
それがスイスドイツ語です。
スイスのアイデンティティを守る言語教育
スイスの義務教育では、各公用語を学ぶようにしています。
数年前に、ドイツ語圏のある州で、小学校でフランス語をやらないかわりに、英語を導入する計画があり、大きな波紋を呼びました。
国は、公用語をまず学ぶように強く指導しました。
理論的には、スイス国民は、公用語を学ぶことでお互いに理解しあうことができます。
それがスイス人のアイデンティティの根っこになります。
でも、実際には、言語の違う地域出身のスイス人は、英語で会話をする場合も多いです。
フランス語圏のスイス人は、ドイツ語があまり得意ではありません。
また、ドイツ語圏のスイス人も、普段、ドイツ語よりスイス・ドイツ語を話すことが多いので、結局、英語のほうが、お互いに通じやすいのです。
少数派にも配慮
ドイツ語圏が多数派のスイスでは、ドイツ語とスイスドイツ語が使えると、就職で有利になります。
大手企業の管理職は、ドイツ語圏出身者が多いです。
公務員は、少数派にも配慮があります。
例えば、ベルン州は、ドイツ語とフランス語の両方の言語が混ざっている州です。
この州の公務員は、両方の言語の人口比に合わせて採用する方針なので、先日は、フランス語圏出身者の募集をしていました。
政府の大臣7人に空席ができるときも、言語のバランスが、選出の大きなポイントになります。
子どもたちには負担
私たち家族の住むヴォー州は、フランス語圏なので、娘は小学校からドイツ語を第一外国語として学び始めました。
中学から英語も加わります。
高校卒業前に、大学入学資格検定 (マチュリテ)を取得するには、ドイツ語と英語が必須なのですが、娘は「ドイツ語と英語の単語がごっちゃになる!」と嘆いています。
最後に
ひとつの国の中で、いくつもの言語が使われるというのは、日本人の私にとっては、不思議なことです。
バラバラになって、ドイツ語圏は、ドイツに、フランス語圏はフランスに、イタリア語圏はイタリアに加わりたかったりしないのかな、と思ったのですが、そんなことは全くないそうです。
言葉は、言葉。国は国。スイス人は、どの言語を話していても、スイスという国をつくる一員なんです。