直接民主制のスイスですが、大統領は国民に選ばれないんです
5月16日にスイスの大統領ウエリ・マウラーがホワイトハウスで、トランプ大統領と会談しました。スイスの大統領がホワイトハウスを公式訪問したのは、初めてのことでした。スイスのメディアでは、「歴史的なこと」、と大きく報じられました。
私は「初めてだったんだ!」とびっくりしてしまいました。ホワイトハウスの敷居は、小国スイスには高かったんですね。
さて、そんなスイスの大統領ってどうやって選ばれるんでしょうか?
スイスの大統領は1年交代の輪番制
大統領、というとアメリカやフランスのイメージが強いですね。全国でものすごい選挙戦の結果、選ばれる大統領たち。
スイスの大統領は、名誉職です。政治を担当する7人の閣僚、つまり大臣たちの中から、ひとりずつ順番に1年間だけ、大統領になります。外国から首脳がスイスを訪問するときは、大統領が迎えますし、外国を訪問したり、国際会議に出るのも大統領の仕事です。権力はないけれど、公式行事に必要なのが、スイスの大統領です。
大統領になった大臣は、本来の大臣の仕事をしながら、大統領の仕事も増えるので忙しい1年になります。
でも運が良ければ、今回のマウラーさんのように、初のホワイトハウス公式訪問で、スイスの歴史に名を残しちゃうこともできるわけです。ちなみにマウラーさんは、2013年にも大統領をやったので、今回は2回目の大統領職です。ベテラン大臣なんですよ。
7人の大臣は毎年ブロマイドを出す
上の写真は、2017年の7人の大臣のブロマイドです。シックなポートレートですね。
「いや、8人いるし!」と突っ込まれるかな。一番下左側の男性は、7人をサポートする事務総長さんです。事務総長と7人の大臣がいっしょに、年に1回、写真をとって、今年の政治は私たちが担当します、と国民に知らせるわけです。
アイドルやスターではありませんが、緑の高原だったり、会議室だったり、毎年、場所やスタイルも変わるので、おもしろいです。きっとコレクションしている人がいると思います(笑)
ブロマイドは、スイスの首都ベルンの連邦議会議事堂で、無料で配布しています。
7人の大臣は国民に会いに来る
毎年8月に、7人の大臣は、その年の大統領の地元に遠足に行きます。いつもは、スーツ姿の7人が、カジュアルなスタイルでリラックスして遠足している姿が、ニュースで流れるのが夏の風物詩なんです。
夏の遠足のほかには、毎年、どこかの州を7人そろって訪問して、地元住民と話をすることも恒例の行事です。
2016年には、私たち家族の住む、ヴォー州の州都ローザンヌに来てくれました。
ローザンヌの中心のサンフランソワ広場に、7人の大臣が青いバンで到着したときは、待ち構えていた地元住民が、写真を撮ろうと殺到しました。
広場には、無料の飲み物や食べ物のテーブルが用意されていて、地元住民(仕事を休んだ夫と私を含む)は、楽しく飲んだり食べたりしながら、7人といっしょに写真をとらせてもらったりしました。
スイスの大臣たちはわかりやすい言葉で話す
スイスでは、年に何回か、大きな議題について国民投票が行われます。連邦議会で議員たちが、何か月もかけて議論して決められた案件も、国民がNO!と言えばひっくり返されてしまいます。
だから、スイスの大臣たちは、メディアで話すときは、国民に伝わるようにわかりやすくかみ砕いて説明をします。国民を納得させないと、連邦議会や大臣たちの苦労して準備したことが実現できないからです。
私にとっては、スイスの政治のほうが、日本の政治よりわかりやすいです。日本の政治家は、本当にわかりにくい、もってまわった言い方をしますね。
そんなスイスですが、外国人の参政権はありません。人口の25%が外国人なので、その声が全く政治に反映されないのは、もったいないと思いませんか?市町村レベルで良いのでなんとかならないかな、と思ったりしています。