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娘の先端恐怖症をスイスの精神科で治療した話

先端恐怖症』を知っていますか?

とがった物が怖くてたまらない病気です。

 

よく知られている恐怖症には、高所恐怖症もありますね。

 

恐怖症は、ひどい場合には、日常生活に支障がある場合もあります。娘の場合がそうでした。

 

精神科医で治療をして完治しましたので、参考になれば幸いです。

 

 

恐怖症

恐怖症(きょうふしょう、英:phobia)は、特定のある一つのものに対して、心理学的および生理学的に異常な恐怖を感じる症状である[1]

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

世の名にはいろいろな恐怖症があります。私は、軽い高所恐怖症です。

 

高い山の崖やむき出しの非常階段には、近づけませんが、日頃の生活に困ることはありません。

 

先端恐怖症

鉛筆やペン、消しゴムなど文房具がたくさんあり、放射線状に置かれている。


とがった物が怖いのが先端恐怖症です。元プロレスラーの佐々木健介さんも先端恐怖症だそうです。

 

とがった物が気になり始める

娘が、とがった物が怖くなったのは、中学生のころからです。

 

最初は、友だちがそばで、ペンや鉛筆を使うのが気になり始め、ペンや鉛筆のとがった先が、自分のほうに向くと怖くなりました。

 

家でも、食事のときに、私や夫の箸の先が娘のほうに向くと、「お箸を私に向けないで!」と怒るようになりました。

 

理解されず症状がひどくなる

日本で、「私は、先端恐怖症なの。」というと、「あ~、そうなんだ。」とすぐにわかってもらえます。

 

でも、どういうわけか、先端恐怖症は、スイスではあまり知られていないタイプの恐怖症です。いちいち、細かく説明しないとわかってもらえません。

 

スイスでよく知られている恐怖症は、高所恐怖症やくも恐怖症でしょうか。

 

ピエロ恐怖症という、日本では聞きなれないものもあります。

 

クラスの友だちに、とがったペン先などを向けないように頼むと、男の子たちが面白がって、わざととがった物を娘に向けてくるようになり、症状が悪化しました。

 

とがった物を見ると、その切っ先が目に刺さるような感じがして、目が痛くなりました。

 

目を閉じても、そのイメージが消えなくて苦痛で涙がでるようになりました。

 

精神科を紹介してもらう

全体に青い画面に目がしらを抑えて悩んでいる女性の青い影が映っている。


高所恐怖症であれば、高い場所を避けて生活する、ということも出来なくはないと思います。

 

でも、とがった物は、日常生活の中でどこにでもあるので、避けようがありません。

 

ファミリードクター(かかりつけの内科医)に相談した結果、きちんと治療したほうが良いだろうと言われ、精神科を紹介してもらいました。

 

先端恐怖症の理解に時間がかかる

担当は、比較的若い女性の精神科医でした。驚いたことに、彼女は『先端恐怖症』を知りませんでした。

 

結局、1回目のセッションは、娘の苦しむ『先端恐怖症』を説明することで終わりました。

 

2回目のセッションは、担当の精神科医のほかに、病院の責任者である精神科医も同席しました。

 

この責任者の精神科医もまた、『先端恐怖症』を知りませんでした。日本にしかない恐怖症なんでしょうか。

 

彼の説明によると、とがった物に関連する恐怖症としては、注射針が怖いという恐怖症があり、それは、医療行為への恐怖症に分類されるので、娘の『先端恐怖症』とは違うものだそうです。

 

分類はともかく、恐怖症の基本の治療を行うことになりました。

 

恐怖の具体化

最初に、怖いものをひとつひとつ書きだしました。はさみ、ペン、箸、雨(空を見上げたとき上から降ってくるのが尖って見えるから。)・・・

 

次に、恐怖や苦痛の段階を5段階として、いろいろな場面を想定して軽い1から最大の5で評価していきます。

 

例えば、テーブルをはさんだ位置にすわった相手から、ペン先を向けられることは、1~5段階の4、という具合です。

 

暴露療法

恐怖や苦痛を5段階評価した結果をもとに、一番恐怖が軽い状態から慣らしていくことになりました。

 

恐怖の状態を作り出して慣らしていくこの方法を暴露療法というそうです。

 

3回目のセッションから、この治療がはじまりました。

 

まず、目を閉じて恐怖を感じる場面を想像しました。最初は怖くなり、すぐ目を開けてしまいました。

 

また、何メートルか離れたところに、ペンを置き、それをじっと見つめ、慣れたら段々、近づけていきました。

 

セッションを重ねて、置いてあるペンになれたら、先生がペンを持っているのを見るように言われました。

 

置いてあるものより、人が持っているペンのほうが怖いので、先生の持っているペンを見ている間、ずっと泣いていることもありました。

 

完治に驚く

画面いっぱいに明るい新緑の木漏れ日がひろがっている


正直なところ、『先端恐怖症』をわかってもらうだけで、2回のセッションが必要だったという状態だったので、ちゃんと治療できるのか、不安なすべり出しでした。

 

娘は、毎回、セッションから帰ってくるたびに、「つらかった。」、「いっぱい泣いた」という状況でした。

 

しかし、それは、セッションを重ねるごとに、少しずつ、怖い度が高い状況に直面させられていたからです。

 

つまり、セッション毎に、床に置いていたペンは、段々近くなるわけです。

 

また、次のセッションでは、とうとう先生がペンを握り、娘との距離が次第に近くなり、最後は、ペンを振り回すようになったわけです。

 

娘にしたら、毎回ハードルが上がり、つらいばかりなのですが、確実に恐怖症を克服しつつあるのは確かでした。

 

1回1時間のセッションを全部で15回受診しました。

 

始めのうちは、1週間か2週間に1回、最後の4回は、3週間、4週間と間をあけて受診しました。

 

最後は、とがった物が全く怖くなくなったので、治療を止めたのですが、本人も私と夫も完治したことに驚きました。

 

まとめ

恐怖症は、目に見えないので、本人以外にはわかりにくいものです。私と夫も、娘の『先端恐怖症』を、最初は軽く考えていました。

 

娘の苦しみをもっとはやく気がつくべきだったと反省しています。

 

娘の治療で、恐怖症は、きちんと治療をすれば治る病気だとわかりました。

 

もし、同じように恐怖症で、苦しい思いをしている方がいらっしゃれば、娘のように、精神科などの専門の医療機関に相談することをおすすめします。